春の訪れと共に、桜の開花が話題となるこの季節。ソメイヨシノの観察をしている中で、興味深い発見がありましたのでご紹介します。
ソメイヨシノの樹脂
ソメイヨシノの幹から出る新芽を観察していると、「ゼリー状の付着物」を発見しました。
樹脂の正体を調べてみると、コスカシバ(蛾の一種)など何かしらの害虫の仕業ということがわかりました。この害虫は幹内に侵入し、樹皮下の組織を食べることによって生じる現象なのだそうです。
植物は傷つけられた部分を修復するために樹液を分泌し、自己回復を図っています。この写真のように琥珀色から濃い色まで様々です。
そう言えば、琥珀って、天然樹脂が化石化したものだよね!
そうだね。琥珀は松や杉、柏などの樹脂からできているね。他にもどんな天然樹脂があるか深掘りしてみよう。
松の樹液
前述した「琥珀」は、松柏科の樹脂が長年、土砂に埋もれて化石化したものと言われています。琥珀に植物や虫などの包容物がみられるのはそのためです。
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この他にも松ヤニの用途は幅広く、スポーツから音楽分野まで多岐にわたります。
松ヤニの主な用途は、滑り止めです。
スポーツでは、バレエのシューズに塗ったり、ボルダリングの滑り止めなどに使われています。
音楽の世界では、バイオリンの弓に松ヤニを塗ることによって、弓と弦に摩擦を生じさせ音が出るのだそうです。
松ヤニ採取については、戦後以降は人手不足などの理由からアメリカからトール油を輸入して、国内で加工しているようです。
漆の樹液
漆は天然塗料として知られ、特に黒は「漆黒」として有名です。この漆は、特殊な木を引っ掻く「漆掻き」という技術により採取されます。
ウルシの木の幹に傷をつけて滲み出る樹液をヘラで一滴一滴救って、数日後にまたその次の傷をつけて採取しているのだそうです。
この技術は「漆掻き」と呼ばれ継承されているんだよ。
国内の漆の7割は岩手県で生産されています。
楓の樹液
忘れてはいけない、樹液と言えば私たちみんなが大好きなメープルシロップ。
メープルシロップは、カエデの樹液から作られます。カエデの木に穴を空けて、樹液を溜め、煮詰めて濃縮することで、この甘いシロップが作られます。
この容器に溜まった樹液を煮詰めてメープルシロップが作られています。
白樺の樹液
メープルシロップに並んで、飲料で活用されているのが、白樺の樹液。
バーチウォーターと呼ばれ、抗酸化作用、アンチエイジングの効果があると言われ人気です。
飲料の他には、ヘアケア商品や、石鹸などにも利用されています。
採取方法は、カエデに似ていて、穴を開けて樹液を容器に溜めます。
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ソメイヨシノの木で見つけた樹脂から、様々な天然樹脂について学ぶきっかけとなりました。桜の樹脂の活用についてはまだまだ調査中ですが、この発見により、天然素材を活かした伝統工芸や採取技術、意外な活用法などについて知ることができ、私の日常に新たな意味をもたらしました。
桜の樹液(樹脂)は2月から4月くらいに見られるようですので、今年のお花見の際に、桜の樹脂を探してみてはいかがでしょうか?
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《参考》
・漆、一滴ずつ手作業ですくう 「日本一の里」岩手・二戸市浄法寺町, 朝日新聞デジタル 2024.04.01
・あなたの知らない『松脂』の世界, BUNKYO GAKKI, 2024.04.01